任意整理は利息を返済する必要がないから、返済が長引いても貸金業者側には何もメリットがないんだ。だから、返済の前倒しを断る理由はないと思うよ。
それじゃ今回は、任意整理における繰り上げ返済について詳しく解説していくね!
繰り上げ返済をしても大きなメリットはない
任意整理でお金に余裕が出てきた場合、残りの借金を繰り上げ返済して借金生活から早く開放されたいとお考えになる人もいることでしょう。
繰り上げ返済とは、返済計画で決まった毎月の返済額とは別の「予定外」の返済を指します。
繰り上げ返済で代表的なところと言えば、住宅ローンや自動車ローンなどが思い浮かびますが、任意整理においても繰り上げ返済をすることは可能です。
ただし、任意整理の場合は繰り上げ返済をしてもあまり大きなメリットはないので、そのメリットとデメリットをよく理解した上で判断したいところです。
任意整理の返済には利息が含まれない
住宅ローンや自動車ローンの場合、繰り上げ返済をすれば返済期間が短くなり、その分の金利の負担が減るので支払総額を減らせるというメリットがあります。
一方、任意整理の場合は元々利息が免除されているので、繰上げ返済をしても支払総額は変わらないのです。
任意整理で一括返済をするメリット
任意整理後の一括返済には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
- 任意整理で一括返済をするメリット
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- 返済額を減らせることがある
- 借金生活から開放され精神的な負担がなくなる
返済額を減らせることがある
前述の通り、任意整理後の返済には利息がないので繰り上げ返済をしても支払総額は減りませんが、一括返済であれば減額できる可能性があります。
貸金業者に対して、残った借金を一括で返済する代わりに返済額を減らしてもらえないかと交渉をするのです。
貸金業者にしてみれば、どうせ貸しておいても儲けにならないお金です。早く回収ができて今後の管理の手間も省けるのであればと、多少の減額であれば検討してくることもあり、交渉がうまくいけば返済額の7割~9割の返済で済む場合もあります。
減額交渉は貸金業者の決算期が狙い目!?
これは稀なケースにはなりますが、貸金業者の決算時期にあわせて減額交渉をすれば、通常では考えられないくらい大幅に減額されることがあります。
貸金業者にも1年間の収益と損失を算出する決算期というものがあります。一般的には4月から翌年3月までの損益を算出する3月期決算と1月から12月までを一期とする12月期決算がよく知られています。
決算時期を迎えた貸金業者は国に税金を支払うことになりますが、そのためのキャッシュが不足している場合、一括でまとまった返済があると非常に助かるものです。そのため、この時期に減額交渉をすれば、大幅に減額をしてくれることもあるのです。
この決算時期を狙った交渉は一括返済に限ったことではなく、任意整理手続き中の交渉においても同じことが言えますが、交渉はあくまで専門家である弁護士や司法書士にお任せしましょう。
弁護士や司法書士であれば、決算期に交渉をまとめ易い貸金業者の情報を持っていますし、ここで紹介した「交渉するタイミング」以外にも、素人では考えつかないような交渉テクニックを教えてくれる場合もあります。
借金生活から開放され精神的な負担がなくなる
お金に余裕が出てきて、毎月無理なく返済できるようになっても借金は借金です。借金を抱えているとやはりどこか気分が晴れないものです。
しかし、繰り上げ返済をして全ての借金なくしてしまえば借金の重圧からくる精神的な負担もなくなり、気分的にはだいぶ楽になることでしょう。
借金があるために歯を食いしばって我慢してきた家族旅行なども、晴々とした気持ちで楽しむことができるのではないでしょうか。
任意整理で一括返済をするデメリット
続いては、任意整理後に一括返済をするデメリットを確認していきましょう。
- 任意整理で一括返済をするデメリット
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- 期限の利益を放棄することになる
- ブラックリスト解除は早まらない
- 家計が苦しくなってもお金を借りれない
期限の利益を放棄することになる
聞き慣れない言葉かと思いますが、期限の利益とは「お金を借りても返済期限まではお金を返さなくてもよい権利」のことです。
任意整理の場合だと、3年の分割払いで和解したのであれば、それを前倒しして1年や2年で完済をしなくてもよいという権利になります。
この権利があることによって、毎月の返済を滞りなく行っている限りは貸金業者から一括返済を請求されることはないのです。
しかし、任意整理後に一括返済や繰り上げ返済をするとなれば、この期限の利益の権利を放棄することになるのです。
貸金業者に一括返済日を伝えておきながら返済できなかった場合、利益の権利は放棄済みと見なされてしまい、貸金業者側に一括返済を請求する権利が発生してしまうことになるのです。
このような事態を避けるためにも一括返済や繰り上げ返済を検討する際は、弁護士などに相談のうえ慎重に判断をしましょう。
ブラックリスト解除は早まらない
借金を早く完済しても、その分早く信用情報機関から事故情報が消える(ブラックリスト登録が解除される)わけではありません。
日本の信用情報機関には大きく分けてKSC・CIC・JICCの3つの機関がありますが、「借金の完済日から5年以上」で事故情報が消えるところもあれば、「任意整理の手続き開始から5年以上」経たなければ消えないところもあるのです。
また、各信用情報機関は独自ネットワークシステムで事故情報を共有しているので、どこか1つの機関にでも事故情報が残っている限りブラックリスト解除とはならず、ローンを組むこともクレジットカードを作ることもできない状態が続くことになるです。
家計が苦しくなってもお金を借りれない
いくらお金に余裕が出てきたとしても、ブラックリスト状態が続いていることを忘れてはいけません。
無理なく繰り上げ返済をしていたつもりでも、不測の事態が起きて次回の返済に充てるお金が無くなってしまうこともあるかもしれません。
そのような時、一時的にでも借り入れができれば良いのでしょうが、ブラックリストが解除されていなければ当然できません。
また、一括返済によって借金が無くなったとしてもブラックリストが解除されるわけではないので、失業などによりお金に困ってしまっても借り入れをすることができません。
万一ここで闇金にでも手を出してしまうと、せっかく一括返済で借金がなくなったのに、これまで以上に過酷な借金地獄に陥ることになってしまいます。
一括返済をする際は、完済した後の生活のことをよく考えたうえで慎重に検討をするようにしましょう。
繰り上げ返済をしてもよいケースとは?
繰り上げ返済をしても翌月の返済はこれまでと変わることはありません。また、完済後もブラックリスト状態は続くため新たな借り入れはできません。
ですので、一括で完済ができ、且つその後の生活に支障がないと判断した場合以外は繰り上げを避けるべきです。
現実的に考えられる一括返済のケースとしては、親の遺産や退職金などでまとまったお金が入った時となるでしょう。
ただし、繰り上げ返済をするにしても自分ひとりで行うのではなく、代理人である弁護士などから貸金業者に申し入れをして貰いましょう。
債務者本人からいきなり相手方に交渉をするよりも、和解交渉を担当した弁護士などに間に入ってもらった方が話がよりスムーズに進むはずです。
よくある質問
任意整理と繰り上げ返済についてよくある質問をまとめました。
一括返済と繰り上げ返済ってなにが違うの?
早期返済の方法には一括返済と繰り上げ返済の2つがありますが、その大きな違いは借金の全額を返すのか一部しか返さないかといった点になります。
一括返済
残っている借金をいっぺんに完済することを「一括返済」と言います。任意整理の場合、他の債務整理に比べて借金総額が小額な場合が多いので、ある程度返済を続けた後に全額を一度に返済するケースは珍しくありません。
繰り上げ返済
全額ではありませんが、返済計画で決まった毎月の返済額とは別に返済をすることを「繰り上げ返済」と言います。この繰り上げ返済をすることにより、通常3年~5年となることが多い任意整理後の返済期間を短縮することができます。
一部の貸金業者だけに一括返済をすることはできる?
できません。
複数の貸金業者を相手に任意整理をした場合、債権者平等の原則と言って、全ての債権者を平等に取り扱わなければなりません。
例えば、Ⅹ社、Y社、Z社の3社に対して任意整理を行った場合、X社だけに一括返済するということはできず、3社全てに対して一括返済をしなければいけません。
任意整理と繰り上げ返済についてのまとめ
今回は任意整理と繰り上げ返済について詳しく見てきました。
本記事のポイント
- 任意整理後の繰り上げ返済に大きなメリットはない
- 一括返済をすればが支払総額を減らせることもある
- 早期返済をしてもブラックリスト解除時期は変わらない
任意整理後の繰り上げ返済には、借金の重圧から開放されるなどのメリットがありますが、住宅ローンなどとは違って返済総額を減らすことはできません。
一括返済であれば交渉次第で減額できる可能性もありますが、その後の家計が苦しくなってしまうリスクもあります。
返済を続ける中で経済的に余裕が出てきたとしても、安易な繰り上げ返済は避け、必要であれば弁護士などの専門家に相談のうえ返済計画を慎重に見直してみましょう。
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