それじゃ今回は、個人再生による妻の財産や家族への影響について解説していこうか。
個人再生をしても妻(配偶者)の財産に影響はない
個人再生をしたら配偶者の財産はどうなってしまうのでしょうか。
結論から言いますと、自分自身の個人再生によって配偶者の財産に影響が出ることは一切ありません。
まず、個人再生は自己破産とは異なり、財産の差し押さえがありません。これは個人再生を申し立てる本人に限ったことではなく、当然その妻や夫、つまり配偶者の財産であっても差し押さえられることは一切ありません。
また、個人再生の必要書類の中に「財産目録」といって、不動産や車、預貯金などの所有財産を書き込まなくてはいけない用紙がありますが、ここに記入するのはあくまで本人名義の財産だけであって、配偶者が持つ財産を記入する必要はありません。
このように、個人再生をしても配偶者の財産が没収されることはありませんし、所有財産として裁判所に申告する必要もないのです。
妻の財産は財産目録に記入しなくてよい
個人再生では、最低限、所有財産の評価額以上の金額は債務者に返済しなければいけないという決まりがあります。
例えば借金が1,000万円ある場合、通常であればその1/5である200万円まで借金を減額することができますが、所有する財産の評価額が400万円だったとすると、その400万円までしか借金を減らすことができないのです。
そして、申立人が所有する財産の評価額を「清算価値」といいますが、この清算価値を明らかにするために前述の財産目録が必要になるのです。
財産目録の作成に際し、「所有する財産をどこまで申告すれば良いのか?」と、頭を悩ませる方も少なくありませんが、記載するのは申し立てをする夫名義の財産だけで問題ありません。
借金や個人再生についてはあくまで個人で行うものであって、いくら家計を共にしているとはいえ、妻名義の財産までも申告する必要はないのです。
原則、妻の生命保険の解約返戻金は財産に含まれない
多くの人が「財産目録へ記入するべきか」悩む物のひとつに、妻の生命保険の解約返戻金があります。
解約返戻金とは、保険の解約時に、加入期間や支払った保険料に基づいて保険会社から払い戻されるお金の事です。
基本的に妻名義の生命保険であれば解約返戻金も妻の財産になりますので、財産目録へ記入する必要はありません。
ただし、妻名義の保険であっても申立人である夫の財産と見なされてしまうケースもありますので注意が必要です。
例えば、妻名義の保険であったとしても、その保険料を払っているのが夫であれば、その解約返戻金は夫所有の財産と見なされてしまい、清算価値に含められてしまうことがあるのです。
この辺の判断は各裁判所によって異なってきますので、詳しくは弁護士などに相談されてみてください。
夫の財産を妻名義に変更するのはNG
妻名義の財産が清算価値に含まれないとはいえ、個人再生前に夫名義の財産を妻名義に変えてしまうのはNGです。
確かに名義を妻に移してしまえば、より多くの財産を守りながら借金の大幅減額が可能になりますが、この行為はいわゆる「財産隠し」に該当し、発覚した場合は個人再生の認可が見送られてしまう可能性があります。
また、個人再生前に譲渡した財産についても財産目録に記入しなければいけない決まりになっており、清算価値を下げるような行為は一切認められていません。
裁判所も隠し財産がないかを徹底的に調べ上げてきますし、個人再生認可後に発覚した場合であっても再生計画が取り消しになる可能性が高いので、財産は嘘偽りなく正直に申告をしましょう。
個人再生をしても妻(配偶者)に返済義務はない
個人再生をすると借金を1/5にまで減額できますが、残った借金は原則3年で返済をしていかなくてはなりません。
この際、借金の返済義務があるのは個人再生をした夫だけであって、配偶者である妻には返済義務は生じませんし、当然、貸金業者が妻や家族に返済を迫ることもできません。
夫の借金はあくまで夫だけのもの
自分の借金は自分だけのものであり、たとえ妻であっても夫の借金の返済義務を負うことはありません。
このことは民法に規定された「夫婦別産制」の考えに基づいており、結構前・結婚後に個人が所有した財産はその人だけが持つ特有のものとされているのです。
借金についても考え方は同じで、個人が持つ借金はあくまで個人だけのものであり、妻や家族が返済をする必要はないのです。
日常家事債務だけは例外
上記のように、基本的には夫の借金を妻が返済する必要はありませんが、「日常家事債務」だけは例外なので注意しておきましょう。
日常家事債務とは、夫婦が日常生活を送るうえで必要となるものを購入するためにした借金のことで、この借金については夫婦で共に返済していく義務があります。
民法761条:日常の家事に関する債務の連帯責任
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
日常家事債務の代表的なものとしては、衣食住のための買い物です。例えばスーパーマーケットでクレジットカード払いをした場合、カードの名義人が夫であったとしても、夫婦で連帯して返済をする義務があります。
また、夫婦で賃貸住宅に入居している場合、夫名義で賃貸契約をしていることが多いと思いますが、家賃の支払いは生活をしていくための必要経費になりますので、この場合も夫婦二人で返済義務を負うことになります。
生活費の補填としての借金も同様で、夫名義の借入れであっても妻にも借金の返済義務が生じることになります。
個人再生による家族への影響
ここまで見てきたように、夫が個人再生をしても妻の財産に影響はありませんし、夫と共に妻が借金の返済義務を負うことはありません。
では、夫が個人再生をしたことにより、家族の個人信用情報に影響が出てしまうことはないのでしょうか。
家族の信用情報に影響はない
結論を言いますと、夫が個人再生をしても妻や子供の個人信用情報に傷がつくことはありません。
個人信用情報に事故情報が登録されるのも、あくまで手続きをする夫だけであって、妻や子供がいわゆる「ブラックリスト」に登録されてしまうことはありません。
夫に関してはブラックリスト入りとなってしまい、およそ7年~10年間はカードの発行やローンを組むことができなくなりますが、信用情報に影響のない妻名義であれば、カードの発行もローンによる支払いも可能です。
ブラックリストによる日常生活への影響は、こちらの記事で詳しく解説しています。
家族カードは使用不可になることも
夫が契約しているクレジットカードの家族カードに限っては、残念ながら利用を制限されてしまうことになります。
家族カードとは、家族の誰かが契約しているクレジットカードの追加カードとして、他の家族に発行されるカードのことで、元々の契約者が夫で、そこに追加する形で妻や子供にカードを発行するのが一般的なケースです。
契約者である夫のカードが使用できなくなってしまえば、その子カードである妻や子供のカードも使えなくなってしまうので注意しておきましょう。
これとは逆に、夫ではなく妻がブラックリストに載ってしまった場合では、夫のクレジットカードが使えなくなることはないので、妻の持つ夫の家族カードはそのまま使い続けることができます。
個人再生をしないと家族に迷惑を可能性あり!今すぐ相談を!
債務整理の際に妻や子供への影響を心配するのは当然のことですが、個人再生であれば家族に大きな影響を与えてしまうことはありません。
しかし、個人再生で借金問題が解決できないとなれば、残る選択肢は自己破産しかなくなってしまいます。
自己破産は家族への影響を避けられない
自己破産をすれば借金を帳消しにすることはできますが、家族への影響を避けることはできません。
まず、自己破産をすると持ち家や車といった高額な財産はほとんど没収されてしまいます。そのため、住み慣れた所から引越しをしなくてはなりませんし、車がない不便な生活を強いられることにもなります。
引越しをすれば子供は転校を余儀なくされることもありますし、通っている塾や習い事を続けるのも困難になってしまうかもしれません。
子供の将来ために学資保険を積み立てていても、解約を強いられて解約返戻金を回収されてしまう可能性が高いですし、自己破産者は借金の保証人になれないので、子供の奨学金の保証人になってあげることもできません。
また、自己破産者の妻が住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者になっている場合だと、残ったローンの返済義務は妻が負うことになってしまいます。
妻も返済することができなければ、夫同様に自己破産を検討せざるを得ず、夫婦揃ってブラックリスト入りとなれば約10年間は一切ローンを組むことができなくなってしまいます。
借金問題の解決には早期相談が大切です!
借金によって生活が行き詰っている人は、借金という名の病気にかかっているのと同じです。
病気になれば早めに医者に診てもらうのと同じように、借金という病気を治すには1日も早く専門家に相談をして、これ以上問題を悪化させないことが大切です。
これまでに自己破産をした人の中にも、個人再生によって借金を大幅に減額できれば返済を継続できた人がいたかもしれません。できることなら持ち家を手放したくなかった人も少なくなかったはずです。
今ならまだ間に合うかもしれません。自己破産しか打つ手がなくなってしまう前に、1日も早く弁護士に相談をして借金問題の悪化に歯止めをかけるべきです。弁護士への相談が家族の未来を守ることに繋がるはずです。
よくある質問
個人再生による財産・家族への影響についてよくある質問をまとめました。
個人再生で車を没収されてしまうのはどんなケース?
ローンの支払い中の車は没収されてしまう可能性が高いです。
自動車をローンで購入した場合、ローンを完済するまでは所有権がローン会社のままになっていることがほとんどです。そのため、個人再生を行うと、ローンの回収が難しいと判断されて車を引き上げられてしまうのです。
妻と共有名義になっている自宅でも残せるの?
共有名義の自宅であっても残すことができます。
個人再生では、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用することにより、住宅ローン以外の借金だけを整理の対象として、住宅ローンは従来通りに支払っていくことが可能になります。
この際、自宅を複数人で所有している場合であっても、所有者の中に個人再生をする債務者が1人でも含まれていれば住宅資金特別条項を利用することができます。
貸金業者から給与を差し押さえられそうだけど、個人再生をすれば防げるの?
はい、個人再生をすれば強制執行による給与の差し押さえをストップできます。
差し押さえを止めるのは、個人再生の「申し立て」と「開始決定」のいずれかのタイミングになります。
申し立てによって止める場合は、個人再生を申し立てた裁判所に「強制執行の中止命令の申し立て」をして、裁判所が中止すべきと判断をすれば差し押さえを止めることができます。
また、個人再生の開始決定がされると、今ある借金に関するすべての強制執行が停止されますので、自動的に給与の差し押さえも止まることになります。
個人再生をする際、妻に関する種類も必要になるの?
妻に収入がある場合、収入証明書として過去2か月分の給与明細や源泉徴収票などの提出を求められます。
また、夫の口座と妻の口座に密接な繋がりがあると裁判所に判断された場合や、財産隠しなどを疑われた場合は、妻の預金通帳のコピーを求められることもあります。
個人再生と妻(配偶者)の財産についてのまとめ
今回は個人再生による妻の財産、家族への影響などについてまとめてみました。
- 本記事のポイント
-
- 個人再生をしても妻の財産に影響はない
- 個人再生をしても妻に返済義務は発生しない
- 個人再生による家族の信用情報への影響はない
自己破産とは違い、個人再生であれば妻の財産や家族に大きな影響を与えてしまうことはありません。
もしあなたが今、「利息の返済ばかりで元本が減らない」「返済が苦しいからまた別のところから借入れをしよう」などとお考えなら、既に自力での借金問題の解決は難しい状態にあると言えます。
このまま借金を放置し続ければ、自己破産を選択せざるを得ない事態にもなりかねません。
家族のためにも自己破産だけは避けたいと思うのであれば、弁護士などの専門家に相談をしながら「今ある借金の減額方法」を考えていくことが最も重要です。
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